人形だけが、決められません。伯父を亡くして半年、書類の手続きは終わり、遺品の整理も進んだのに、五月人形と雛人形の前でだけ、私たち遺族の手は止まったままです。
「人形供養」という言葉を調べ始めたのは、そのためです。捨てるのは、どうしてもできない。かといって、このまま誰もいない家に飾り続けるのか。その間で迷っている遺族が、供養という選択肢について調べたことを、この記事にまとめます。
先にお伝えしておくと、うちの人形は、まだ供養に出していません。だからこれは「やってみた」記事ではなく、出すかどうかを決めるために調べた側の記事です。同じ場所で迷っている方の、判断材料になればと思います。
人形供養とは——なぜ「捨てる」ではなく「供養」なのか
人形供養とは、役目を終えた人形を、神社やお寺で祈りとともに焚き上げ(お焚き上げ)などの形で手放す習わしです。雛人形、五月人形、日本人形、ぬいぐるみまで、対象は広く受け付けているところが多いようです。
法律や宗教上の義務では、ありません。人形は分別すれば一般のごみとして出せます。それでも供養という形が残っているのは、人形には顔があるからだと思います。長く家にあって、家族の節目のたびにそこにいたものを、ごみ袋に入れる。それが「できない」と感じる気持ちは、弱さではなく、ごく普通の感覚です。
つまり人形供養は、人形のためというより、手放す側の気持ちの区切りのための仕組みです。ここを押さえると、「どこに頼むか」「いくらかけるか」も考えやすくなります。
「供養しないとどうなる?」への答え
「人形供養をしないとどうなる」という検索が、とても多いようです。率直に書くと、何も起きません。罰があたる話ではないと、私は考えています。現にうちの人形は供養に出されないまま、半年、家で飾られています。
ただ、「何も起きない」ことと「気持ちが片付く」ことは別です。ごみとして出して後悔が残るくらいなら、供養という手順を踏んだほうが、自分が楽になる。そういう種類の選択肢だと捉えています。
人形供養の方法は、大きく3つ
- ① 神社・お寺に直接頼む——人形供養を受け付けている社寺に持ち込む方法です。常時受付のところと、年に一度の人形供養祭でまとめて受け付けるところがあります。近くに受け付けてくれる社寺があるか、持ち込みの日時や箱数の条件は、それぞれの社寺への確認が必要です。
- ② 葬儀社・自治体などの供養祭イベント——葬儀社や地域団体が定期開催する人形供養祭に持ち込む方法です。開催時期が決まっているので、タイミングが合えば、という選択肢です。
- ③ 郵送のお焚き上げキット——キットを購入して人形を箱に詰めて送ると、提携の神社で供養・お焚き上げをしてもらえるサービスです。出向く必要がなく、受付日時の制約もないのが特徴です。
遠方の実家や、亡くなった家族の家の人形を整理する場合、①②は「その地域まで行って、受付日に合わせる」というハードルがあります。うちの場合、伯父の家を見回れるのは車で30分の距離に住む母たちで、私自身は飛行機を使う遠方に住んでいます。調べていて郵送型に目が留まったのは、人形を抱えて社寺を回る段取りが、誰の負担になるかを考えたからです。
費用の目安——「箱の大きさ」で考える
費用は頼み先によって幅がありますが、調べた範囲では、おおよそ次のような考え方でした。
- 神社・お寺——供養料(初穂料・お布施)として数千円程度から。箱数や人形の量で変わるところが多く、「お気持ちで」とされる場合もあります。封筒で納める場合の表書きは、神社なら「初穂料」、お寺なら「御布施」が通例とされています。
- 郵送キット——箱のサイズごとの定額制が一般的で、数千円台から。送料や供養証明の有無はサービスによって異なります。
どの方法でも、ガラスケースや雛壇・台座などの付属品は供養(焚き上げ)の対象外とされることが多い点は、共通の注意です。ケースは自治体の区分に従って処分し、供養に出すのは人形本体、と分けて考えると整理しやすいと思います。
自宅から送れる郵送キットという選択肢
うちのように「気持ちの整理がついた日に、家から送り出せる」形を残しておきたい場合は、郵送キットが合っていると感じています。キットを取り寄せておけば、受付日や持ち込みの段取りに縛られずに、自分たちのタイミングで決められるからです。
もちろん、近くの社寺で受け付けてもらえるなら、直接持ち込んで手を合わせる形のほうがしっくりくる方もいると思います。方法に優劣はなく、「自分が区切りをつけられる形」で選ぶのがいちばんだと思います。
まだ手放せない、という答えでもいい
ここまで調べておいて、うちの人形がまだ家に飾られたままなのは、矛盾しているように見えるかもしれません。でも、いまはこれが私たちの答えです。あの人形は、伯父の家の景色の一部で、私にとっては形見でもあります(この話は「形見とは|遺品との違いと何を残すかを遺族が書く」に書きました)。
供養は、手放すと決めた人のための仕組みです。決められないうちは、決めなくていい。ただ、「いざ決めた日にどうすればいいか」を知っておくだけで、ずいぶん気持ちが軽くなりました。家のこれから(売却や片付けの期限)が決まると、人形の答えも一緒に出さなければならなくなります。だから、調べるだけは先にしておく。それが、いまの私たちのやり方です。
人形供養についてよくある質問
Q. 人形供養をしないとどうなりますか?
何かが起きるものではありません。人形供養は宗教上の義務ではなく、手放す側が気持ちの区切りをつけるための習わしです。ごみとして出すことに抵抗がある場合の選択肢として考えると、判断しやすくなります。
Q. 人形供養の費用はいくらくらいですか?
神社・お寺では供養料(初穂料・お布施)として数千円程度からが目安で、箱数や量によって変わります。郵送キットは箱のサイズごとの定額制が一般的で、数千円台からです。いずれも、ガラスケースや台座は対象外とされることが多い点に注意してください。
Q. 雛人形や五月人形も人形供養に出せますか?
出せます。雛人形・五月人形は人形供養の代表的な対象です。ただし雛壇・ガラスケース・道具類は供養の対象外とされることが多いため、人形本体と分けて、付属品は自治体の区分に従って処分するのが一般的です。
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