身内が亡くなると、悲しむ時間もないまま、すぐに葬儀の話が始まります。
私もそうでした。伯父を亡くした翌日には、もう葬儀社の人と向き合っていました。何を聞かれているのか、頭が半分しか働いていなかったのを覚えています。
先に、いちばん大事なところだけ書いておきます。
・葬儀は、急なことでも、慌てて1社だけで決めないほうがいいです。
・葬儀の費用は、同じような内容でも、社によって数十万円ちがうことがあります。
・複数の社から見積もりを取って比べるだけで、後悔がぐっと減ります。
・それは、故人を粗末にすることではありません。遺された人のお金を守ることも、ひとつの供養だと、私は思っています。
長く読めない状態の人もいると思うので、結論を先に置きました。ここから先は、私が手続きの中で知ったことと、一般に言われていることを、ゆっくり書いていきます。
突然の葬儀には、考える時間がない
葬儀のいちばんつらいところは、「ゆっくり考える時間が、ほとんど与えられない」ことだと思います。
身内を亡くした直後は、頭が真っ白なまま、警察や役所、親族への連絡に追われます。そのなかで、葬儀の段取りも、待ってはくれません。亡くなった当日か、翌日には、もう「どこに、どうお願いするか」を決めなければなりません。ひとり暮らしの家で亡くなり、警察が関わった場合は、検案が終わってから葬儀が始まります。その場合の流れは孤独死の葬儀はどうなる?に書きました。
私の場合も、悲しみと混乱のなかで、ほとんど立ち止まる余裕がないまま、葬儀の準備に入っていきました。だからこそ、後から振り返って思うのです。「あの時、もう少しだけ、比べてから決められたら」と。
これは、私が冷たい人間だから言っているのではありません。お金のことを考えるのは、故人を悼む気持ちと、まったく矛盾しません。伯父は、最後まで家族に気を配ってくれる人でした。だから、遺された家族が悲しみに沈んで、無理を重ねていくことを伯父が望むとは、私にはどうしても思えないのです。
もうひとつ、身をもって知ったことがあります。母は、葬儀の場で、また後日の電話で、伯父が亡くなったことを伝えるたびに、「なんで?」と執拗に聞かれていました。持病があったのか。最近まで元気だったのに——。昔の人ほど、こういうとき容赦がありません。答えに困る母を、私は何度も隣で見ました。本当につらい光景でした。自死遺族にとって、葬儀やその後の連絡は、「説明を求められる場」にもなります。呼ぶ人を絞れる家族葬には、遺族をそうした質問から守る、という現実の意味もある。これは、経験した者として言えることです。
※伯父は生前、親戚には広く知らせない形でいいという趣旨の希望を残してくれていました。誰を呼ぶかで悩まずにすんだのは、本当に助かりました。故人が遺してくれた終活の一面については、別の記事でも触れています。手続きそのものに追われた記録は、こちらにまとめました。
葬儀の種類と、費用のおおよその相場
葬儀には、いくつかの形があります。突然の場面では、この違いを知らないまま勧められるまま決めてしまいがちですが、形によって、かかるお金も、見送り方も変わってきます。ここでは、一般に言われている内容を整理しておきます。
家族葬
家族や、ごく親しい人だけで見送る形です。一般葬にくらべて参列者が少なく、その分、規模も費用もおさえやすいとされています。一般的な費用の目安は、おおよそ100万円前後とされることが多いですが、内容によって幅があります。
「家族葬」と「密葬」は、よく似た意味で使われますが、密葬は「後日あらためてお別れの会などを行うことを前提に、まず内輪で済ませる葬儀」を指すことが多いです。家族葬は、それ自体で見送りを完結させる形を指すことが多い、という違いがあります。
通夜を行う家族葬もあれば、通夜を省く形もあります。何をして、何を省くかで、費用も変わってきます。
直葬(火葬式)
通夜や告別式を行わず、火葬だけで見送る、もっとも簡素な形です。費用は、おおよそ20万〜40万円ほどが目安とされています。費用をできるだけおさえたい場合や、故人や遺族の希望で簡素に見送りたい場合に選ばれます。
一般葬
親族だけでなく、友人・知人・近所の方なども広く招いて見送る、昔ながらの形です。参列者が多い分、費用は大きくなりやすく、おおよそ150万〜200万円ほどになることもあるとされています。香典をいただく前提で考えると、実際の負担はまた変わってきます。
※ここに書いた金額は、あくまで一般的に言われている目安です。地域や、お願いする社、内容によって大きく変わります。「だいたいこのくらいの幅があるんだな」という、ざっくりした地図として受け取ってください。
後悔しないために、見積もりで見ておきたいところ
私がいちばん伝えたいのは、ここです。葬儀の見積もりは、ぱっと見の総額だけでは判断できません。あとから「これも別料金だったのか」と気づくことが、よくあるからです。
慌てているときほど、次のような点だけは、確認しておくと後悔が減ります。
- 「一式」に何が含まれているか:祭壇、棺、ドライアイス、安置、車両、人件費——どこまでが基本料金で、どこからが追加なのか。
- 追加になりやすい費用:火葬料、式場の使用料、料理や返礼品、お布施(寺院へのお礼)。これらが見積もりに入っているか、別なのか。
- 人数によって変わる費用:料理や返礼品は、参列者の人数で変動します。見積もりが「何人前提か」を確認します。
- キャンセルや変更の条件:急いで決めたあと、内容を変えたくなったときに、どうなるか。
これらを、できれば2社か3社で見比べる。同じ「家族葬」でも、含まれているものがちがえば、総額は数十万円ちがってきます。比べることは、けっして失礼なことではありません。故人のためにも、遺された家族のためにも、納得して見送るための準備です。
急なときでも、無料で見積もりを比べられる窓口
とはいえ、悲しみのなかで、自分で何社にも電話して条件を聞いて回るのは、現実的ではありません。私自身、当時そんな余力はありませんでした。
そういうときのために、一度の問い合わせで、条件に合う葬儀社の見積もりをまとめて比べられる、無料の窓口があります。家族葬に対応した社を中心に、要望を伝えれば、近くの社を案内してもらえます。
「まだ何も決めていない」「とりあえず費用の目安だけ知りたい」——そんな段階でも使えます。見積もりを取ったからといって、その社に頼まなければいけないわけではありません。
家族葬の見積もりは、複数社でまとめて比べる
葬儀社の一括見積もりサービス(無料)はいくつかあります。「費用の目安を知りたいだけ」の段階でも使えますし、見積もりを取ったからといって、その社に頼まなければいけないわけではありません。検索で「家族葬 一括見積もり」と調べると、比較できる窓口が見つかります。
もちろん、急ぎでなければ、自分で近くの葬儀社をいくつか調べて、直接見積もりを比べてもかまいません。大事なのは、「1社だけを見て決めない」ということだけです。比べる方法は、あなたのやりやすい形で大丈夫です。
よくある質問
葬儀社を選ぶ時間が、もうありません。それでも比べたほうがいいですか?
はい、できる範囲で比べることをおすすめします。一度の問い合わせで複数社の見積もりを取れる窓口を使えば、急いでいても、数十分で目安をつかめます。1社だけで即決するより、後悔が減ります。
家族葬と密葬は、何がちがいますか?
家族葬は、家族やごく親しい人だけで見送りを完結させる形を指すことが多いです。密葬は、後日あらためてお別れの会などを行うことを前提に、まず内輪で済ませる葬儀を指すことが多い、という違いがあります。言葉の使われ方には幅があるので、社に確認すると確実です。
家族葬でも、通夜はやるものですか?
家族葬でも、通夜を行う形と、通夜を省いて告別式・火葬だけにする形があります。どちらにするかで費用も変わります。決まりはないので、家族の希望と、かけられる費用で選んで大丈夫です。
いちばん費用をおさえられるのは、どの形ですか?
一般的には、通夜も告別式も行わず火葬だけで見送る「直葬(火葬式)」が、もっとも費用をおさえやすいとされています。ただ、お別れの時間が短くなるため、後悔のない形かどうかは、家族でよく相談して決めるのがよいと思います。
見積もりを取ったら、その社に頼まないといけませんか?
いいえ。見積もりは、あくまで費用と内容を知るためのものです。比べた結果、別の社にしても、自分で探した社にしても、問題ありません。断ることに、引け目を感じる必要はありません。
身内を亡くした直後に、お金の話をするのは、とてもしんどいことです。私も、悲しみと段取りが同時に押し寄せて、何度も心がついていきませんでした。
それでも、ひとつだけ覚えておいてください。葬儀は、慌てて1社で決めなくていい。比べてから決めても、誰にも失礼にはならない。
遺された人が無理をしないことも、供養のうちだと、私は思っています。あとは、あなたのペースで大丈夫です。
※この記事は、葬儀や相続の手続きを実際に経験した、ひとりの遺族の手記です。葬儀の費用や内容は、地域・社・条件によって大きく変わります。正確な金額や個別の判断については、各葬儀社や見積もり窓口に直接ご確認ください。ここに書いたのは、専門家の見解ではなく、当事者として知ったことの記録です。
