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相続放棄の手続きと期限|3か月を前に「しない」を選んだ遺族の記録

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伯父を自死で亡くし、遺された地方の実家を相続することになったとき、私が一度は真剣に考えたのが「相続放棄」でした。

築四十年超の古い家。解体には百数十万円かかるのに、土地の評価額はそれを大きく下回る。いわゆる負動産です。しかも、自死があった事故物件(心理的瑕疵物件)でした。「こんな家、相続したら負担になるだけじゃないか」——そう思って、相続放棄という選択肢を調べました。

でも、結論から言うと、私(正確には相続人である母)は相続放棄をしませんでした。理由は後で書きますが、簡単に言えば「放棄すると、守りたかったものまで手放すことになる」と分かったからです。

この記事は、相続放棄を専門家として解説するものではありません。負動産を前に放棄を検討し、調べ、最終的に「しない」と決めた一遺族の記録です。同じように「この家、相続放棄したほうがいいのかな」と迷っている方の、判断材料になればと思います。

目次

この記事でわかること

  • 相続放棄とは何か、3か月の期限のこと
  • 手続きと必要書類(どこで・何を)
  • 相続放棄の「落とし穴」(プラスの財産も失う・撤回できない)
  • 私が相続放棄を「しなかった」理由
  • 相続放棄が向くケースと、そうでないケース

相続放棄とは──「3か月以内」がすべての前提

相続放棄とは、亡くなった人の財産も借金も、いっさい引き継がないという選択です。家庭裁判所に申し立てて認められると、その人は「最初から相続人ではなかった」ことになります。

ここでいちばん大事なのが、期限です。

相続の開始があったことを知った日から、原則3か月以内(民法915条)

この3か月を過ぎると、原則として相続を承認したもの(=財産も借金も引き継ぐ)とみなされます。借金のほうが多いのに気づかず3か月を過ぎてしまう、というのが最悪のパターンです。

私の場合も、葬儀や役所の手続きに追われているうちに、あっという間に時間が過ぎていきました。「放棄するかもしれない」と少しでも頭をよぎったら、まず3か月という期限だけは意識しておくことを、経験者としておすすめします。どうしても3か月で財産の調査が終わらない場合は、家庭裁判所に「期間の伸長」を申し立てる方法もあります。

相続放棄の手続きと必要書類

相続放棄は、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で手続きします。

おおまかな必要書類は次のとおりです(ケースにより異なります)。

  • 相続放棄申述書(家庭裁判所のサイトでダウンロードできます)
  • 故人の住民票除票または戸籍附票
  • 故人の死亡が記載された戸籍(除籍)謄本
  • 申述する人(放棄する人)の戸籍謄本
  • 収入印紙(申述人1人につき800円)と、連絡用の郵便切手

子も配偶者もいない人を相続する場合(私の伯父のようなケース)は、誰が相続人になるかを確定させるために、より多くの戸籍が必要になります。相続人の範囲が複雑なときは、司法書士や弁護士に依頼すると確実です。手続き自体は自分でもできますが、期限が迫っている・相続人が複雑・借金の有無がはっきりしないようなときは、専門家に相談したほうが安全だと感じました。

相続放棄の「落とし穴」──ここを知らずに動くと危ない

調べていくなかで、「これは知らないと危ない」と思った点が3つあります。

1. プラスの財産も、まとめて失う
相続放棄は「借金だけ捨てて、現金や預貯金はもらう」ということができません。マイナスもプラスも、すべてまとめて放棄することになります。「いらない家だけ放棄して、現金は相続する」は不可能です。ここが、私の判断を変えた最大のポイントでした。

2. 一度放棄すると、原則撤回できない
家庭裁判所で受理された相続放棄は、原則として撤回できません(民法919条)。後から「実はプラスの財産のほうが多かった」と分かっても、やり直せないのです。だからこそ、放棄の前に財産の全体像を把握することが大事でした。

3. 財産に手をつけると「放棄できない」ことがある
故人の預貯金を使ったり、財産を処分・名義変更したりすると、「相続を承認した(単純承認)」とみなされ、相続放棄が認められなくなることがあります(民法921条)。「形見だから」と安易に処分する前に、放棄の可能性があるなら、まず手をつけないことが大事です。

私が相続放棄を「しなかった」理由

ここまで読んでお分かりのとおり、私が放棄をやめたいちばんの理由は、実の兄を亡くし、育った実家がその舞台となってしまった母を、守りたかったからです。それができたのは、伯父が現金(預貯金)を遺してくれていたからでした。

家だけ見れば負動産で、放棄したくなる気持ちはありました。でも、相続放棄をすれば、伯父が遺してくれた現金まで、すべて手放すことになります。その現金は、私が「母のこれからの生活に充ててほしい」と強く願ったものでした。それを放棄するわけにはいきませんでした。

では、いらない負動産(事故物件の家)はどうしたか。放棄するのではなく、「売却」で手放すことにしました。事故物件・訳あり物件を専門に買い取ってくれる業者に相談すれば、負動産であっても引き受けてもらえます。「家を放棄する」のではなく「家を売って手放し、現金は守る」——これが私の出した答えでした。

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放棄を考えるほどの負動産でも、売却で手放せることがある(成仏不動産)

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負動産だからといって、放棄が唯一の道ではありません。プラスの財産があるなら、家だけを売却で手放すほうが、結果的に多くを守れることもあります。私の場合はそうでした。

相続放棄が向くケース・そうでないケース

私の経験と、調べた範囲での整理です。あくまで一般論として読んでください。

相続放棄が向いていることが多いケース

  • 借金(マイナスの財産)が、明らかにプラスの財産より多い
  • 故人に、把握しきれない連帯保証債務などがある可能性が高い
  • 相続する財産が、負動産しかない(プラスの現金等がない)
  • 親族との関わりを、相続の場面でこれ以上持ちたくない

放棄しないほうがよいことが多いケース

  • プラスの財産(現金・預貯金など)が、マイナスより多い
  • 負動産はあるが、売却で手放せる見込みがある(←私のケース)

迷ったときは、自己判断で3か月を過ぎてしまう前に、専門家に相談するのが安全です。相続放棄の手続きそのものは司法書士や弁護士の領域ですが、「放棄すべきか、それとも承継して売却すべきか」という相続全体の方針で迷うなら、まずは相続の相談窓口で整理してもらうのも一つの方法です。専門家は内容で分かれていて、相続税が発生しそうな場合は税理士、放棄や登記などの手続きは司法書士・弁護士、という使い分けが一般的です。

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まとめ

  • 相続放棄は財産も借金もすべて放棄する選択。3か月の期限が最優先
  • 手続きは家庭裁判所。相続人が複雑なら専門家に頼むと確実
  • 落とし穴=プラスの財産も失う/原則撤回不可(民法919条)/財産に手をつけると放棄できないことがある(民法921条)
  • プラスの財産があるなら、負動産は”放棄”でなく”売却”で手放すほうが多くを守れることもある(私のケース)
  • 借金が多い・負動産しかない場合は放棄が向く。迷ったら3か月を過ぎる前に専門家へ

相続放棄は、一度決めるとやり直せない大きな選択です。私は「放棄しない」と決めましたが、それは伯父が現金を遺してくれていたからでした。状況が違えば、放棄が正しい人もいます。大事なのは、期限の中で、財産の全体像を見てから決めること。同じ立場の誰かが、後悔のない選択をできますように。

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※この記事は、自死で伯父を亡くした遺族が、専門家ではなく当事者として体験・記録したものです。相続放棄の制度・要件・期限は個別事情や改正で変わります。実際のご判断は、家庭裁判所・司法書士・弁護士など専門家にご確認ください。

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