伯父を自死で亡くし、遺された地方の実家と土地を相続したとき、私は「この土地を、どう活かせるか」を、いくつもの角度から考えました。
築四十年超の古家は、解体費(百数十万円)のほうが土地の評価額を上回る、いわゆる負動産。ただ手放すのも惜しい気がして、一時は本気で、家を壊して更地にし、太陽光発電を載せる(土地活用)ことまで検討しました。「使っていない土地が、毎月いくらか生んでくれるなら」——そう思ったのです。
でも、調べていくうちに、考えが変わりました。決め手のひとつが、詳しい知人から聞いた、ある一言でした。
「太陽光発電は、撤去費用が勘案されていないのが、いまの問題なんだよ」
この記事は、太陽光発電を勧めるものでも、否定するものでもありません。相続した土地の活用として太陽光を検討した当事者が、メリットと、見落とされがちな撤去費用の問題を調べ、最終的に「私は売却を選んだ」までの記録です。同じように「相続した土地、太陽光でもやってみようか」と考えている方の、判断材料になればと思います。
この記事でわかること:
- 相続した土地に太陽光発電という選択肢(土地活用)
- 太陽光発電のメリット(売電・土地活用)
- 見落とされがちな「撤去費用」の問題
- 私が太陽光を見送った理由
- 結局、私が選んだ道
相続した土地に太陽光発電、という選択肢
使っていない土地の活用法として、太陽光発電(野立て太陽光)は、たしかに選択肢のひとつです。
建物を建てる土地活用(アパート経営など)に比べると、初期投資が比較的読みやすく、日当たりさえ確保できれば、地方の土地でも始められる、と言われます。発電した電気を電力会社に売る「売電」で、長期的に一定の収入を見込む、という仕組みです。
私が惹かれたのも、まさにここでした。遠方の負動産が、ただ固定資産税を食うだけの存在から、いくらかでも生み出す存在に変わるなら——と。
ただ、「読みやすい」と「リスクがない」は、別の話でした。
太陽光発電のメリット(と、その前提)
調べた範囲で、太陽光発電による土地活用のメリットとされているのは、次のような点です。
- 使っていない土地に、収益の可能性が生まれる(売電収入)
- 建物を建てる活用より、初期の計画が立てやすいとされる
- 日当たりが確保できれば、地方や郊外の土地でも検討できる
ただし、これらはすべて「長期にわたって、設備が問題なく稼働し続ければ」という前提のうえの話です。太陽光パネルの寿命は、一般に20〜30年程度と言われます。つまり、20年も30年も先まで見越して、初期投資・メンテナンス・そして最後の撤去までを計算に入れて、はじめて「得かどうか」が分かる。私が見落としていたのは、まさにこの「最後」の部分でした。
見落とされがちな「太陽光発電の撤去費用」問題
知人の言葉——「撤去費用が勘案されていない」——を手がかりに調べて、私は、これが個人レベルだけでなく、社会全体の課題になりつつあることを知りました。
太陽光パネルは、永遠に使えるものではありません。寿命が来れば、撤去して、廃棄する必要があります。問題は、その撤去・廃棄の費用が、設置の段階で十分に見込まれてこなかったことです。
- 設置時は「売電でいくら入るか」に目が向きがちで、20〜30年後の撤去・廃棄費用まで計算に入れていないケースが多い
- 撤去には、パネルの取り外し・基礎の解体・産業廃棄物としての処分費がかかり、規模によってまとまった金額になる
- このまま放置されれば、寿命を迎えた大量のパネルが、処分されないまま残るおそれがある(2012年のFIT開始以降に大量導入された設備が、2030年代から順次寿命を迎えると言われています)
こうした背景から、国(FIT制度)でも、出力10kW以上の事業用太陽光については、2022年7月から廃棄費用の「外部積立」が原則義務化されました(住宅用など小規模なものは、この義務化の対象外です)。ただ、それ以前から動いている設備や、対象外の小規模なものについては、撤去費用の備えが所有者任せになっている部分が残ります。
つまり、私のような個人が、相続した土地に太陽光を始める場合、「20〜30年後、自分(あるいは次の世代)が、撤去費用を負担できるのか」まで考えておかないと、結局は「次の負動産」を、未来の誰かに残すことになりかねない。知人の一言は、そこを突いていました。
※制度の細部は改正されることがあります。撤去費用の積立義務や対象の詳細は、経済産業省・資源エネルギー庁の最新情報や、専門の事業者に確認してください。
私が太陽光発電を見送った理由
撤去費用の問題を知って、私のなかで、太陽光という選択肢の輪郭が変わりました。見送った理由を、正直に書きます。
1. 「最後」まで責任を持てる自信がなかった
私は東京に住み、土地は遠方です。20〜30年後、自分がどこで何をしているかも分からないなかで、設備の管理から最後の撤去・廃棄まで責任を負い続けられるのか。考えるほど、現実味がありませんでした。
2. 初期投資と、回収の不確実さ
解体・整地・設置には、まとまった初期投資が必要です。それを長い年月で回収し、さらに撤去費用まで備えるとなると、「いくらか生んでくれる」どころか、トータルで見て本当に得なのか、私には確信が持てませんでした。
3. 遠方の設備を、抱え続けるストレス
伯父の家の手続きで、遠方の不動産を一人で抱える大変さは、身にしみていました。そこに、20〜30年動かす発電設備を足すのは、私にとっては「負担を増やす」ことに思えました。
太陽光発電そのものが悪い、という話ではありません。土地の条件や、本人の事情によっては、有効な活用になる人もいるはずです。ただ、私のケースでは、「最後(撤去)まで含めて考えると、割に合わない」——それが、当事者として出した結論でした。
結局、私が選んだのは「売却」でした
さんざん土地活用を考えた末に、私が選んだのは、古家付き土地として、早めに売却して手放すことでした。
新しい設備を載せて、20〜30年の責任を背負うより、いま手放して、伯父が遺してくれた現金を母のこれからに充てるほうが、私にとっては納得のいく道でした。負動産を、これ以上の負動産にしないこと。考えて考えて、遠くに住む私に残ったのは、結局それだけでした。
事故物件(心理的瑕疵物件)や、解体費が土地評価を上回る家の売却については、専門に買い取ってくれる業者があります。一般の空き家・古家付き土地の売却も、まずは査定から相談できます。「太陽光まで考えたけれど、やっぱり手放そう」と思った私のような人は、まず売却の見積もりを取って、土地活用と比べてみるのがいいと思います。
なお、私のように「太陽光より、いっそ更地にして手放したほうがいいのか」と迷う場合、判断の前提になるのが解体費が実際いくらかかるかです。私は「百数十万円くらい」と概算で止まっていましたが、解体は業者によって金額に差が出ると言われます。解体して手放す道も天秤にかけたい方は、無料の一括見積もりで複数社の解体費を比べてみると、現実的な数字が見えてきます(あくまで判断材料を集める段階で大丈夫です)。
土地活用が悪いわけではありません。ただ、「収入の話」だけでなく「最後(撤去・処分)まで含めた話」で考えること。これは、太陽光に限らず、相続した不動産すべてに言えることだと、私は思っています。
まとめ
- 相続した土地の活用として、太陽光発電(売電)は選択肢のひとつ。ただし20〜30年先まで見越して判断する必要がある
- 見落とされがちなのが撤去・廃棄費用。設置時に勘案されず、将来の負担として残るケースが多い
- 国は2022年7月から一定規模以上の事業用太陽光に廃棄費用の外部積立を原則義務化したが、備えが所有者任せの部分も残る
- 個人が相続地で始めるなら、「最後に自分(や次世代)が撤去費用を負担できるか」まで考えておきたい
- 私の場合は、最後まで責任を持てる自信がなく、売却を選んだ。「次の負動産」を未来に残さないために
土地を相続して「どう活かそう」と考えるのは、自然なことです。でも、活用の話は、入口(収入)だけでなく出口(撤去・処分)まで見て、はじめて判断できる。同じように迷っている方が、後悔の少ない選択をできますように。
※この記事は、自死で伯父を亡くした遺族が、専門家ではなく当事者として検討・調査したことをまとめたものです。太陽光発電の制度・費用・積立義務の詳細は改正されることがあり、個別の収支は条件で大きく変わります。実際のご判断は、資源エネルギー庁の最新情報や、専門の事業者・不動産会社にご確認ください。
